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研究

想像力をふくらませる自由と、
見えないものが見えた時の感動。
研究の魅力は、ここにある。

株式会社豊田中央研究所
戦略研究部門フロンティア研究領域
浜口研究グループ リーダー

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浜口 香苗さん
[東京大学大学院 理学系研究科化学専攻 博士修了]

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※記事内容、及び社員の所属、役職は取材当時のものです。

女友達と、ワイワイ過ごした高校時代

中高一貫校に通っていた私には当時、10人くらいで集まって遊ぶ女友達がいました。女の子だけで集まってキャッキャしているというより、みんな自分の意見を持っていて活発なタイプでしたね。将来のビジョンも、明確。「私が大学の研究職を60歳まで勤め上げたら、あなたが起業した会社に秘書として雇ってね」なんて言い合ったりして、それぞれが自分の“キャリアウーマン像”を描いて青春を生きていたと思います。彼女たちとの思い出で一番心に残っているのが、一緒に小説をつくったこと。交換日記のように順番でまわして、ひとつのストーリーを仕上げていきました。ファンタジーにいきなり忍者が登場するなど、想像力を発揮して自由に書くことが面白くて仕方なかったことを覚えています。

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あきらめずに考えることは暗記よりも楽しかった
今、改めて中高生の頃を振り返って感じるのは、「解く」ことよりも「考える」ことの方が何倍も大切だということ。コンピュータが進化を遂げれば、人間にできる計算なんて、コンピュータの方が数倍早く、正確に回答できるようになる。もしかすると、高校で習った数学や物理の公式なんて全く使わなくなる日が来るかもしれません。でも、問題をつくるのはコンピュータにはできない。そこには想像力が必要だからです。とにかく、イメージをふくらませたり、あきらめずに考え抜く習慣を若いうちにつけておくこと。一夜漬けで覚えてテストで満点をとるより、この出題があったら、参考書のこの部分を読めばいい、と記憶している方が、後々自分にプラスになると思います。私が中高生の頃にやっていた小説の“交換執筆”でもいいですが、考えることを大変だと思わずに、習慣化して、楽しんでみてはいかがでしょうか。
見えないものが見えてくるとテンションがMAXに!
受験生の時は東京大学理科Ⅰ類を目指して猛烈に勉強しました。念願が叶い、合格。その後、理学部化学科、大学院へと進学した私は「表面科学」を専門にしました。電子機器に使われる集積回路などには、表面で起こる反応が使われています。私は研究室で表面の現象を抽出、測定することを繰り返していました。この調査は、電気ノイズが飛び交う日中よりも、世間が寝静まった深夜にやる方がスムーズだったということもあり、夜中、研究室にこもって黙々と研究を進めたこともありました。明け方、小鳥のさえずりを聞き、朝日を浴びながら下宿先まで歩いていると、ほどよい疲労感とともに、ひとつのことをやり遂げた達成感がこみあげてきて、とても清々しい気分になったのを思い出します。研究の魅力は、そうやってやり抜くことで自信をつけられること。そして、見えなかったものが見えてきた時のワクワク感ではないでしょうか。ときには、仮説と異なる結果が出て落ち込むこともあるけれど、おしゃべり好きな私は、先輩や教授に相談しているうちに、だんだん考えがまとまってきて、その考えを次の実験の糧にする、ということを繰り返していました。ひとりで集中することも、息抜きしながらコミュニケーションをとることも、研究にとって大切なことだと思います。
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理系の場合、技術職と研究職の、大きく分けて2つの道があります。研究職は出張やお客様との面会など、相手に合わせて動くことが少なく、自分でスケジュールをコントロールできるため、家庭と両立しやすいのではないかと思います。
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「しらべる」から「つくる」へ 大学から外へ出て企業の研究職に
「表面科学」の分野を掘り下げた私は、博士号まで取得しました。その後、このまま大学に残るか、別のフィールドに行くかを考えたんです。大学の研究室は3~4人で運営していて、ひとり産休に入れば運営が厳しくなる。一方、企業の研究所はひとつの研究チームに約10人。人材が大学よりも潤沢―― この先のライフステージを考え、私は企業で研究職に就くことに決めました。この選択をした時、ふと、当時、理化学研究所にお勤めだった川合 眞紀先生のことを思い出しました。先生のところには学生時代に何度か訪問させていただき、お世話になっていました。子育てもしながら、一流の道を突き進む先生。私も、結婚や出産を経ても、先生のように研究職を続けたいと強く思いました。そして、次は実験・解析といった「調べる」ことだけでなく、何かものを「つくり」、世の中に出したいということも考えました。豊田中央研究所に入社を希望したのは、そんな夢があったからです。
「世の中にないものを、つくっているんだよ」
現在、小学校に通う子供が2人いますが、まわりの協力や理解があって家庭と仕事の両立ができていると感じています。会社はもちろん、ママ仲間、家族に感謝しています。また、家庭では仕事の心配事や焦りがあったとしても、それが子どもに伝わらないようにしたいと思っています。ある時、子供を迎えに行って、帰り道に「ママ好き」と言って手を握られたり、子供が寝た後に、「ママいつもありがとう」という手紙が置いてあったりして、ほろりと涙が出たことがありました。いつも、周囲に目を向け、心に余裕を持っていきたい。そして、いつか子どもに「仕事をしているママが好き」と言われるようになりたいですね。研究のことを聞かれたら、「世の中にないものをつくっているんだよ」と説明するかもしれません。想像力あふれる、未来をつくる仕事。自分の母親がそういうことをやっているんだと、いつか理解してくれたらうれしいですね。
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私が選ぶこだわりの道具
研究の記録をするラボノートのカバーにこだわってみたり、キャラクターもののペンケースやメモ帳を買ってみたりと、 研究のテンションを上げるために文房具を自分らしく工夫しています。
ワタシ視点で見る、育成基金のメリット
技術職、研究職に就く女性は、まだ少ないのが現実です。でも、仲間は少なくても、同じ志を持った仲間たちは、きっとみんな素晴らしい。私もこれまでに心細いと思ったことはありません。女子学生の皆さんは、育成基金での活動を通して、実際の女性技術者とふれあってみてください。もし、大変そう、とか、向いているのかな、とか不安を抱いていたら疑問をぶつけてみてください。きっと、やりがいなど、親身になって話してくれると思います。未来の理系女子の判断の手助けができたらいいですね。
上司から一言
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明るくて面倒見がいい浜口さんは、研究室のムードメーカーです。後輩の研究からプライベートに至るまで、あらゆる相談にのってくれています。でも、彼女は声が大きいから、話している内容が全部聞こえてきてしまうんですけどね(笑)。そして、その一方で頭の回転が速く、計画的に物事を進める力に優れていると感じます。現在、彼女には先端的なテーマを自分で設定し、研究をすすめることに取り組んでもらっています。50年くらい先の未来の社会を想定し、そこに必要な研究テーマを自ら設定。必要な実験、そしてそれに取り組むにはどんなスタッフを集めればいいのかまで、全て自分で決める。計画性と行動力に優れた彼女だからやり遂げられると信じています。研究職は、「将来~だったらいいな」が実現できる、夢のある仕事です。バイオ、電子、材料、機械など、豊田中央研究所の研究領域はとても広く、可能性が広がっています。浜口さんにも、浜口さんの後輩たちにも、情熱を持って研究を続けていってほしいですね。


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