TOYOTA FEMALE ENGINEER DEVELOPMENT FONDATION
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開発

昔は、先端技術に夢中だった。
結婚して、母になり、
今は人に優しい自動車をつくりたい。

株式会社アイシン(旧アイシン精機株式会社)
パワートレインシステム開発部 GM

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大川 明美さん
[島根大学理学部物理学科卒業]

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※記事内容、及び社員の所属、役職は取材当時のものです。

偶然入った部活で自動車の面白さに目覚めた

社会の年表を見るより、理科の便覧を見るのが好きな子どもでした。電気がつく理由、物が落ちるスピードの計算、夕焼けが赤い理由――学校で実験したり勉強したりする中で、「世の中の物事は、物理学で成り立っているんだな」という気持ちが沸き上がってきて、物理学を学べる大学へ。そこで、たまたま入ったのが自動車部でした。ラリーやフィギュアと呼ばれる自動車競技に参加したり、学園祭ではそれを主催したり。自動車の分解もして、それが車の基礎と面白さを知るきっかけになりました。理系の職業といえば白衣を着た研究職か、パソコンを前にプログラミングしているような漠然としたイメージしか持ってなかった私にとって、自動車部へ入部したことは運命。入部していなければ、たぶんアイシンにはいなかったでしょうね。

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先端技術の宝庫にワクワク
自動車部で初めて車の機構を見た時に「こんな風に人に驚かれるような機構を自分でも作りたい」と思いました。私が新卒でアイシンへ入社したのは、男女雇用機会均等法が施行された2年後。それまで女性は結婚したら仕事を辞めることが普通の時代だったので、女性が技術職に就くにはまだ敷居が高かったですね。それでも、アイシンは話を聞いてくれましたし、結婚しても仕事を続けている女性が当時からいたので、勤め続けられる風土は感じていました。 また、今でこそ世界でもトップレベルといわれる日本の自動車業界ですが、私が就職した頃はちょうどこれから世界へ進出していくタイミングで、社内には勢いがありました。自動車業界は先端技術の宝庫でしたし、ワクワクしていましたね。初めて手掛けたのは、超音波振動で水滴が落ちるサイドミラーの開発。バブルの時代だったので、今思うと製品も高級志向でした。もう一つボディ系の製品を開発したあと、EV(電気自動車)用のモーター開発に携わることになって、今に至ります。
ハッキリものを言った方がいい!
どこまで残業ができるか、ミスをした時に男性と同じように叱っていいのか。入社した時にはっきりと上司に聞いてもらえた私は、恵まれていたと思います。変に気遣って遠慮されるよりずっとよかったですし、男性の同期と違う扱いを受けそうになった時には、上司がフォローしてくれました。結婚や出産など生活スタイルが変わるタイミングで、実際にどの程度仕事ができるのか。上司としっかり話して決めておくことは、お互いにストレスをためないために、昔も今も大切なことです。
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どう動いてもらえば良い仕事がができるか、毎日悩みながら、4チームが持つプロジェクトを同時進行しています。あまりバタバタ走り回ると、「管理職って大変」と思われてしまうので、もう少し余裕のある生活を心がけたいですね。
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家族と職場の“理解”が子育ての助けになった
結婚した時、夫は単身赴任中だったので、仕事や生活に変化はほとんどありませんでしたが、産休・育休を取得したあとは義母との同居もスタート。出産が生活スタイルに与えた影響は大きかったですね。保育園へのお迎えが業務のリミットなので、夫と交代で行っていました。上司が真っ先に「おつかれさーん!」と大きな声で言ってくれていたので、まわりも一緒に送り出してくれて、帰りやすい環境づくりをしてくれていたと思います。連れて帰ったあとは、義母に子どもの晩ごはんだけお願いして、もう一度出勤。自分だけで進められる仕事をまとめて行うなど工夫をしました。子どもが中学生と高校生になった今でも、夫とは交代でどちらかが早く帰って、子どもとの時間を取るようにしています。
管理職だから伝えられるものづくりへの想い
私の場合、約10年間で仕事を一通り経験してから産休や育休を経験しました。人の意見を素直に聞ける若い時期に、忙しさが楽しいと感じるくらい働けたことは、「ずっと仕事を続けたい」というモチベーションに繋がっています。入社した頃は、「すごい!」と驚かれるものを作りたいと思っていましたが、今はより多くの人に受け入れてもらうために人に優しい車を作りたい。チームではなく自分の力のみで勝負したいという技術者もいますが、今は開発するシステムもどんどん大きくなりスピードも求められて、一人でできる領域は限られています。やりたいことを実現するために、どうしたらみんなに協力してもらえるのか。若い人もみんな優秀なので、よく話して議論するようにしています。いち技術者から管理職になり、プロジェクトへの想いや意見を直接アピールできる立場にもなりました。得意先との交渉も、自分メインで話を進める機会も増えましたが、まだ上司に頼らざるを得ない状況があるのも事実。もうひと踏ん張りです。
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ワタシ視点で見る、育成基金のメリット
条件によって返済のいらない奨学金は、困っている人にはとても助かる制度だと思います。それだけでなく、さまざまな分野で活躍している女性技術者を紹介したり、高校へ出向いて講演をしているところがいいですね。私が高校生の頃は理系の仕事に漠然としたイメージしか持っていませんでしたが、働くイメージを具体的に持てれば、興味やモチベーションはグッと上がると思います。理系の仕事への理解を深める、いい機会になるといいですね。
上司から一言
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前身となる部署に、チームリーダーと部下として配属されて約15年が経ちますが、大川さんに対して、「女性だから」と“配慮”はしても、“区別”は一度もしたことがありません。実務者だった頃から、彼女は技術的に深い考え方ができる人でした。そして、社会人として物事をやり遂げようとする行動力もある。これが、私が彼女に絶大な信頼を置いてきた理由です。
管理職としても、彼女はこの1~2年で大きく成長していると感じます。上司としての理想や、部下の気持ちを考えながら指示を出すことも上手くなってきました。子育て中でも、大川さんが自ら率先して仕事に取り組んでいることを知っているので、まわりも温かく見守っています。電話でお子さんと大きな声で話していても、「いつものこと」とみんな笑って聞き流していますよ。


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